IntroductionPress ReleaseImagesFact SheetScience at a GlanceTeam MembersLinks

プレスリリース - 2011104日, 00:00 (UT)
English עברית 日本語
すばる望遠鏡、最遠方の超新星を続々発見
京都大学、東京大学、およびイスラエルと米国の研究機関の研究者からなる研究チームは、すばる望遠鏡を用いて100億光年以上遠方の銀河にIa型超新星を新たに10個発見しました。このうち一つはこれまでに知られている中で最も遠いIa型超新星であり、また、現在までの最遠方Ia型超新星ランキングでベスト10のうち9個を占め、すばる望遠鏡の遠方天体探査の能力の高さを示しています。チームはこの新しいサンプルを用いて、Ia型超新星の発生頻度の進化や、Ia型超新星の母天体について新たな知見を引き出しました。

Ia型超新星は宇宙物理学においてたいへん重要な天体です。宇宙に存在する酸素より重い元素、特に鉄のほとんどはこの超新星爆発時に作られます。また、非常に明るいうえに明るさが均一のため、標準光源として遠方銀河の距離決定に用いられ、それにもとづく宇宙膨張の測定は宇宙を加速させる謎のダークエネルギーという物理学上の大問題の発見につながりました。Ia型超新星は連星を組む白色矮星で核反応が暴走することで起きると考えられています。しかしその母天体、つまりどのような連星がIa型超新星を引き起こすのかはまだわかっていませんでした。

遠方のIa型超新星の探査は、ダークエネルギー問題や、宇宙での元素生成史を明らかにする上でたいへん重要ですが、遠方に行くほど超新星も暗くなるので、探査が難しくなります。すばる望遠鏡は8.2mの主鏡による大集光力と高品質な結像性能に加え、圧倒的な広視野を誇る主焦点カメラを持ち、このような遠方超新星の探査に特に強い力を発揮します。今回、チームは「すばるディープフィールド」と呼ばれるかみのけ座付近にある満月程度の広さの領域で超新星を探索しました。この領域には15万を超える銀河がありますが、その中で時間変動する天体を探し、150個にも及ぶ多数の超新星を発見しました。そのうちの10個は、100億光年以上の彼方、すなわち100億年以上昔のIa型超新星でした。

今回得られたデータの解析によって、100億年前の宇宙では、現在の約5倍という高い頻度でIa型超新星が起きていたことが分かりました。この時代には、現在よりはるかに速いペースで鉄などの重元素が生み出されていたことになります。また、Ia型超新星と一般的な星の形成史を比較することで、星が生まれてからIa型超新星に進化するまでの時間スケールも調べられました。Ia型超新星の母天体のモデルとしては、(1)白色矮星と通常の星の連星で星から白色矮星にガスが降り積もる(降着)ことで起きる、(2)白色矮星同士の連星の合体で起きる、という二つのシナリオが有力です。今回の解析結果は(2)の合体説が一般的に予言するものと非常に良く一致しています。この結果は、2008年に日本のチームがやはりすばる望遠鏡を用いて世界で初めて示したもので、その後世界の複数のグループの研究でも確認されていますが、今回のデータはそれをさらに強く裏付けるものです。ただし、(1)の降着説でも今回のデータを説明する可能性は残されており、最終的な決着にはさらなる研究が必要です。間もなく完成するすばる望遠鏡の次世代広視野カメラは、さらに多数の遠方超新星を発見し、貴重なデータを提供してくれるでしょう。

今回の成果は、英国の王立天文学会の学術誌、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society に掲載されます。

 
コンタクト
戸谷友則
京都大学
京都, 日本
電話: +81-75-753-3894
Email: totani@kusastro.kyoto-u.ac.jp